エールホームクリニック

ドクターズコラム

漢方診療について

2023年3月1日

漢方は約2000年前の古代中国・漢の時代に始まり、5-6世紀ごろ日本に伝わり、日本で独自に発展した医学です。
「日本漢方」あるいは「和漢」ともいいます。
近年、漢方薬はドラッグストアや通販サイトなどで手軽に購入できるようになり、より身近なものとなりました。
複数の市場調査によると、6-7割の人は漢方薬の服用経験があると回答しています。
また、医師を対象にした実態調査では、約9割の医師が漢方薬を日常的に処方していることがわかっています。

かぜ、胃腸炎などの急性症状はもちろん、嘔気、胸やけ、腹痛、便秘、食欲不振などの消化器症状、腰痛や頭痛、肩こりなどの症状、月経前症候群や更年期症候群の症状、疲れやすい、めまい感、不安、不眠、冷え症といった慢性の症状には、漢方薬による治療の効果が期待できます。
私は若い頃の一時期、漢方の専門研修を受けて外来診療に携わっていた経験もあり、現在クリニックで内科診療に従事する一方、適応がありそうな場合に漢方診療をさせていただいております。
漢方診療の特徴は、さまざまな症状でお悩みの方に対して、特定の臓器や疾患にとらわれず全身を診ることです。
症状・症候をとらえる基本概念には、「陰陽」、「虚実」、「寒熱」、「表裏」、「五臓」、「気血水」、「六病位」などがあります。

診察は四診といって、望診、聞診、問診、切診で構成されています。
望診は視診のことで、顔色、眼光、皮膚・爪・頭髪・口唇の状態、舌の状態(色調、腫大・萎縮、舌苔など)を観察します。
聞診は聴覚と嗅覚を使った診察のことです。声の大きさ・張り、咳・呼吸音、体臭や排泄物・分泌物の臭いなどに注意して行います。
問診は前述の基本概念をふまえた病歴聴取を指します。
切診は触診のことで、脈診、腹診から成ります。
脈診では手首付近(親指側)の動脈(撓骨動脈)を触れて、性状(触れやすさ、力強さ、緊張度など)を観察します。
腹診では腹部全体の抵抗と緊張の程度、圧痛などを観察します。診察で得られた情報を、基本概念を通して整理・解析し、診断と治療方針・処方(漢方薬)が決まります。
現代医学の病名で処方を決めているわけではありません。

漢方薬は、植物、鉱物、動物由来の生薬を、決められた分量で組み合わせて作られています。
多面的な作用をもつ生薬を複数組み合わせることで、薬理作用を発揮します。
たとえば葛根湯は、桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草・麻黄・葛根という植物由来の7種類の生薬をブレンドして、煮出す(煎じる)ことでできています。
葛根湯は、比較的体力のある人の感冒の初期に、自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こりなどを伴う場合に適応となりますが、麻黄と桂枝の組み合わせにより発汗作用が強まり、症状の改善につながります。

本来の漢方薬は、「~湯」という名前のものは煎じ液状の薬、「~散」は生薬を粉末状にした薬、「~丸」は生薬の粉末を蜂蜜や米粉で球状にした薬です。
エキス剤は、煎じ液から抽出したエキスを粉状にしたもので、インスタントコーヒーのような剤形となっています。なお、「~散」や「~丸」のエキス剤は、同じ組成の生薬の煎じ液から作られています。
漢方薬に副作用がないわけではありません(重篤なものはまれです)。
アレルギー性の副作用は黄芩(おうごん)を含む処方で起こりやすく、間質性肺炎、肝障害があります。
甘草を含む処方では、浮腫、高血圧、低カリウム血症(筋痛、脱力、不整脈など)を起こす偽性アルドステロン症、地黄を含む処方では胃もたれなどの消化器症状、麻黄を含む処方では食欲不振や胃痛、不眠、尿閉、頻脈や動悸、血圧上昇に注意が必要です。
なお漢方薬を開始後、症状の回復に向かう過程で、一時的な症状の悪化や、予期しない症状が出現することがあります。(「瞑眩(めんげん)」といいます。)

私は漢方を「患者さまに、よりご満足をいただくための診療ツール」だと考えています。
漢方診療をご希望の方は、診察室でぜひお気軽にご相談ください。

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