エールホームクリニック

ドクターズコラム

注射への備え。

2023年4月6日

「注射ヤダー!」
小児科で外来をしていて、ほぼ毎日耳にする言葉です。
ほとんどの人がワクチンなどの注射を経験したことがあるはずです。
もちろん注射には多少の痛みはありますし、子供としては大きなストレスになると思います。
実際に恐怖のあまり診察室から逃げ出してしまう人もいます。

予防接種が充実するのは良いことですが、注射をする機会は次第に増えており、ストレス対策の重要性は増しています。また、近年では予防接種のストレスをきっかけに身体症状(めまいや動悸・気分不快など)を生じる予防接種ストレス関連反応(Immunization Stress-Related Response:以下ISRR)という概念が注目されるようになりました。
ISRRの予防の為にも、注射の恐怖や不安、注射の痛みを少しでも減らす努力が大切だと感じています。

今回は予防接種と痛み、恐怖心の対策について、主に家族ができる対策を紹介したいと思います。

WHOの指針*には、恐怖や不安の軽減をするために大きく分けて3点の注意点が挙げられています。
①コミュニケーション
②体位
③周囲の雰囲気づくり  です。

①に関しては中立的な立場を取ること。「注射は痛いぞ~」と煽ってもダメだし、「絶対に痛くないから」と言って過度に安心させてもダメです。
心の準備をするために「始めましょう。」とか「チクッとします。」と言うのは必要ですが、それ以外の事は敢えて言わずに、「今日は何食べたの?」とか、「何して遊んだの?」とか、関係ないことを話して気を紛らわすのが良いとされています。スマホで好きな動画を見せたりするのも効果的です。

②に関してですが、乳児の場合には本人と家族の安心する形で、幼児の場合には親の膝に前向きで座って抱っこしてもらうのが良いとされています。
学童期の方の場合にはベッドに寝て接種をすることもあります。要はリラックスしている事が大切です。

③ですが、医療者も家族も自信を持って、和やかな雰囲気でいることが大切です。
信頼できる家族が同席することは大切ですが、周囲の恐怖感は子供にも伝播すると言われているため、保護者の方も不安があるようなら、予定している接種について事前に調べたり話を聞いたりして不安を解消しておくと良いかもしれません。

痛みを減らす方法として、ご家庭または本人でできることは多くありませんが、WHOの指針*には
・保冷剤やスプレーで注射部位を事前に冷やしておく
・接種時に深呼吸をする
・接種時に、接種部以外の筋肉に力を入れたり脱力したりする事を繰り返す
・接種前~接種後にかけておしゃぶりを吸わせておく(乳幼児の場合)
などが対応として挙げられています。

今回は家族でできる対応について簡単にご紹介しました。
特に注射嫌いなお子さんをお持ちの方、上記の方法が少しでも参考になれば幸いです。

また、医療者側がストレス緩和のために努力することは勿論なので、今後も勉強を続けて、機会があれば皆さんと知識を共有していきたいと思います。

*Global manual on surveillance of adverse events following immunization.Geneva: World Health Organization; 2016

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