コロナワクチン接種後待機時間内に発生した対応事例の検討
【Dr.藤本】
京都国際会館にて開催された第121回日本皮膚科学総会で、『コロナワクチン接種後待機時間内に発生した対応事例の検討』をポスター発表しました。
はじめに
新型コロナウイルスワクチンは、現状SARS-CoV-2感染症に対する最も有効な予防手段です。今後は診療科を問わず、多くの医療機関で接種が一般的になっていく可能性があります。接種に伴う重篤な副反応の頻度は極めて低いとされますが、接種後の待機時間内に生じた反応については現場での判断と対応が求められます。
当院では2021年6月1日から11月23日までの期間に合計70708回(ファイザー: 30478 回、モデルナ: 40178 回、アストラゼネカ: 52 回)の新型コロナウイルスワクチン接種をおこないました。この内、接種後15〜30分の待機時間内に何らかの対応を要した事例53例について詳細を検討いたしました。
結果
待機時間内に対応を要した例は、計53例 (0.075%)で、内、迷走神経反射・不安関連症状が45例 (0.064%)、即時型アレルギー反応が8例 (0.011%)でした。【図】
【図】対応事例内訳
続いて即時型アレルギー反応の8例について詳細を検討しました。年齢は、20〜60歳代と比較的若年に集中し、中でも半数が40歳代でした。性別では、女性 7例、男性 1例、 ワクチン種別では、ファイザー 4例、モデルナ 4例で、接種回数別に見ると、1回目 6例、2回目 2例でした。【表】
【表】即時型アレルギー反応として対応した8例
症状について詳細を検討したところ、そう痒感(7/8例)が最多で、咽喉頭違和感(6/8例)が次に続きました。一方、じん麻疹(2/8例)、発熱(1/8例)と他覚的症状を示した例は比較的少数でした。
対応・転機は、7/8例が抗アレルギー薬内服、経過観察後に帰宅。発熱を伴った1例では、それに加えてアセトアミノフェンの内服を行いました。いずれも軽症の分類であり、救急搬送を要する中等症以上の事例はみられませんでした。
まとめ・考察
対応例の大部分である85%(45/53例)は、血管迷走神経反射・不安関連症状でした。即時型アレルギー反応(いずれも軽症)の頻度は1万回に約1例程度(8例/70708例 (0.011%))でした。即時型アレルギーは、特に1回目の接種時に出現する例が多いこと、2回目接種時に生じた例であっても、遡って問診すると1回目にごく軽度の咽喉頭違和感などを自覚していたことがわかりました。特筆すべきことに、当院での接種において調査対象期間内に救急搬送に至った事例はありませんでした。
今回の発表に際し当院での事例を振り返りましたが、接種前の問診の重要性をあらためて認識させられました。 具体的には、1)血管迷走神経反射の既往を聴取し、該当する方にはベッド臥床接種をすすめること。そして、2)1回目接種直後に咽喉頭違和感など、なんらかの自覚症状があった方については詳細を聴取し、対応を事前に相談しておくこと。当院での相談事例はまだありませんが、3)中等症以上の即時型アレルギー反応既往例については、mRNAワクチン接種に拘泥することなく、組み換えタンパクワクチンなどの接種をすすめること、などが重要であると考えました。
接種希望者に安心・安全の接種サービスを提供するためには、アレルギー対応を含めた経験を蓄積し、学術活動を通じて社会にノウハウを共有していくことが重要であると認識致しました。