エールホームクリニック

膠原病

膠原病は、通常は細菌やウイルスなどからの攻撃を守る免疫の仕組みが、何らかの原因で自分自身の組織を攻撃してしまい、様々な全身の症状を引き起こす病気の総称です。病気になる原因は不明ですが、病気になりやすい遺伝的背景があり、そこに何らかの環境因子による刺激が加わって発病のきっかけになると言われています。各病気でみられる症状は様々ですが、最初の症状として、原因のわからない熱や体のだるさが続く、皮疹、関節痛・筋肉痛などが見られることが多いです。
以下、代表的な疾患を記載します。

代表的な疾患

全身性エリテマトーデス

妊娠可能な年齢の女性に多く、蝶形紅斑と呼ばれる顔の皮疹が特徴的ですが、全身の様々な場所・臓器に色々な症状(脱毛・皮疹、関節痛・筋痛、心膜炎・胸膜炎、腎炎、腸炎、神経症状など)を起こし、血液検査では血球減少や補体の低下が見られたり、抗核抗体・抗ds-DNA抗体・抗Sm抗体が陽性となったりします。人によって生じる病変の部位や症状の強さは異なり、病状に応じた治療を行います。治療はステロイド薬を使用することが多いですが、免疫抑制剤やプラケニル、ベンリスタなど他剤を組み合わせて使い、ステロイド薬を極力減量しつつ、病気がぶり返さないよう治療を行っていきます。

シェーグレン症候群

40-60歳台の女性に多く、涙腺・唾液腺をはじめとする外分泌線に慢性的な炎症が起きる病気で、ドライアイ・ドライマウスといった乾燥症状が主な症状です。鼻腔乾燥、気道の乾燥による咳、皮膚乾燥によるかゆみ、胃酸分泌低下による胃炎、膣乾燥による性交痛なども生じます。血液検査では、抗SS-A抗体や抗SS-B抗体が陽性となります。半数の方はこのような乾燥症状のみで、点眼や唾液分泌を促す薬などを用いますが、残りの半数は経過中に検査値異常や間質性肺炎、間質性腎炎、神経炎などの臓器病変が生じて、免疫抑制療法を行うことがあります。

皮膚筋炎・多発性筋炎

左右の体の中心に近い筋肉に炎症が起き、筋肉が壊れる病気で、筋痛や筋力低下が起こります。皮膚筋炎は、筋炎に加え、特徴的な皮疹(ヘリオトロープ疹、ゴットロン徴候など)が生じます。肺に‘間質性肺炎’を起こし、空咳や息切れの症状が出ることもあります。皮膚筋炎・多発性筋炎の患者さんは保有する自己抗体の種類によって、症状やその後の経過に特徴があります。ステロイド薬と免疫抑制剤で治療し、それらの治療で筋炎の改善が乏しい場合はグロブリン製剤を使用することがあります。また、一般に比べ悪性腫瘍(‘がん’)を合併する頻度が高く、筋炎の症状が出る前後2年間に発見されやすいと言われており、注意が必要です。

全身性強皮症

皮膚が硬くなることが主な症状ですが、肺・心臓・消化管・腎臓などの内臓にも病変が及ぶことがあります。多くの方で手足先の色が白→紫→赤と3色に変化するレイノー現象が見られ、手足先の血流障害が強いと痛みの強い潰瘍を作ってしまうことがあります。他の膠原病のようなステロイド治療は強皮症には無効であり、血行改善や胸やけ・便秘に対する治療などを行いますが、病気の進行が速い方には免疫抑制剤を用いたり、間質性肺炎に対して抗線維化剤を投与したりして、進行を抑える治療を行います。

混合性結合組織病

レイノー現象や手指全体の腫れぼったさが見られ、血液検査で抗RNP抗体が高値となります。前述の全身性エリテマトーデスや筋炎、強皮症の症状を併せ持った病気です。

血管炎症候群

全身の様々な血管の壁に炎症が起き、壁の構造が壊され、血管が破綻したり狭窄・閉塞したりすることで、全身症状や血が通わなくなった臓器の障害が生じる病気です。炎症を起こす血管の太さや病因により分類され、大型血管炎(高安動脈炎、巨細胞性動脈炎)、中型血管炎(結節性多発動脈炎)、ANCA関連血管炎などがあります。ステロイド薬や免疫抑制剤、生物学的製剤(リツキサン、アクテムラ)で治療します。

ベーチェット病

繰り返す口の中の潰瘍、皮膚症状(結節性紅斑、血栓性静脈炎、ニキビ様皮疹)、眼症状(ぶどう膜炎)、外陰部潰瘍の4つの主症状のほか、関節炎、腸管病変、血管病変、神経病変や、男性では副睾丸炎などを起こすことがあり、悪くなったり良くなったりを繰り返します。眼や腸管・血管・神経病変では強力な治療が必要ですが、それ以外はコルヒチン、オテズラなどの内服や局所の治療で対応します。白血球の血液型であるヒト白血球抗原(HLA)のうち、B51やA26を持つ人の割合が一般より多く、これらが病気の発症に一部関与しています。

成人スティル病

発症時、高熱が続き、のどの痛み、関節炎、皮疹、リンパ節や脾臓の腫れの症状とともに、血液検査で白血球数や血清フェリチン値の上昇、肝障害が見られます。‘これがあればスティル病と診断できる’という特別な検査などはなく、発熱の原因となる他の病気が否定できてやっと診断ができます。ステロイド薬や免疫抑制剤、アクテムラが有効です。

膠原病は、発症時や病気の勢いが非常に強い場合は入院での治療が必要となりますが、いったんしっかり炎症を抑えた後は、今度は極力ぶり返し(再燃)なく、病気や治療によるダメージが生じないよう、感染症や動脈硬化などの合併症が起きないようにするのが、治療の目的となります。多くの人が定期的に通院し、病状に応じて治療薬を調整しつつ長くつきあっていくことになります。専門的なかかりつけ医として、皆さまが病気とうまく付き合って自分らしく生活できるよう、サポートいたします。

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