正しく感情と向き合うには
いつも、ありがとうございます。
2025年がスタートしました。今年の干支は「乙巳(きのと・み)」。「乙」は十干の2番目で、植物の成長にたとえると、「種子の殻を突き破り、芽を出す状態」を意味します。「巳」は蛇のこと。脱皮を繰り返して成長することや、その生命力の強さから、「再生」「復活」「長寿」を象徴し、縁起がいい生き物とされています。
つまり「乙巳」は、外界からの圧力や抵抗があってもそれに屈することなく前へ進み、これまでにない新しいものを生み出していく一年を意味しています。
2024年のスローガンを振り返る
2024年も大きな動きがあった私たちメディカルビットバレー、そしてエールホームクリニック。さまざまな新しい出会いもあり、前進を感じさせられる一年となりました。2024年の初めに、スローガン「組織化せよ」を掲げ、メディカルビットバレー並びにエールホームクリニック内の「横の連携強化」に挑んだ一年でもありました。
衰退の危機に直面している長岡と新潟の地域医療を守るため、エールホームクリニックは、多くの患者さんを効率的に受け入れられる医療機関を目指して設立されました。病床を持たない診療所としては規模が大きく、地域の皆さんに適切な医療サービスを提供するという使命を持って運営しています。
オーナー医師が一人で運営する小さな組織の診療所とは異なり、多くのスタッフが存在し、それぞれがプロフェッショナルとしての誇りを持って職務に励むだけでなく、互いの仕事に尊敬の念を抱いて、高度な次元での連携が大事です。そのために、掲げたスローガンが「組織化せよ」でした。
組織化を実現するため、「MBVバリュー宣言」を作って、組織内部へ積極的に意識改革を促してきました。「相手のことを思いやる」「人にやさしく感謝の言葉を忘れない」など、およそ小学生に教えるような内容でしたが、エールホームクリニックがさらに前進するには、全スタッフが肝に銘じなければならない内容だと考え、エールホームクリニックのスタッフルームなどに掲示しました。
自身の感情と正しく向き合う
エールホームクリニックの組織化の試み。初年度である2024年を総括するなら、私は「50点」と評価をしたいと考えます。
運営部の強化や他部署との連携といった部分では一定の成果が出て、患者さんのためにチームで動く意識の徹底は、進んだと感じています。その傍ら、最高のパフォーマンスを発揮するために、一段上のコミュニケーションを目指すといった点ではまだ伸びしろがあると感じました。人間は感情がある生き物。みんないろいろな思いを抱くとは思います。ただ、湧き上がる感情を、その場で全て吐露する必要はなく、自分の感情と正しく向き合って上手にコントロールする術を身に着けるべきなのです。
言いたいことを言い合える組織は素晴らしい。議論は大歓迎。けれども、感情の赴くままに言葉を相手に投げつけるのは、議論とは呼びません。川面に石を落とせば波紋が広がるように、相手に自分の感情を投げつければ、組織内部にネガティブな影響が広がります。
上手に「感情コントロール」して、心理的安全性を確保
「竹屋の火事」ではないけども、腹を立ててプンプン怒ったり、言いたい放題ポンポン言ったりしていると、自分にも跳ね返ってきます。「短気は損気」なんてことわざもあるぐらい、湧き上がる感情に身を委ねていると、手痛いしっぺ返しを食らいます。
「感情コントロール」が大切なのは、なにも組織の調和のためだけではありません。組織内で働く個々のスタッフが幸せな毎日を過ごすためにも重要です。ギスギスした人間関係を求めている人なんていないでしょう。できることなら、周囲の人と調和した温かい人間関係の中で、過ごしたいものですよね。上手に「感情コントロール」をし、心理的安全性が担保された組織を目指しましょう。そのためには、ネガティブな感情が込み上げてきても、それを相手に投げつけるのではなく、グッと言葉を飲み込んで、自分の発言がどんな影響を周囲に与えるかじっくり考える。これが大事。
今日は感情コントロールの重要性を伝えてきましたが、最後に真逆なことをいいます。
最後に人を動かすのは「感情」です。
人の心を揺り動かすのは「感情」にほかなりません。つまり、ネガティブな感情を上手にコントロールしつつも、相手への感謝や尊敬といったポジティブな感情は、どんどん伝えあってほしいところです。
とはいえ、ネガティブな感情に支配されそうなことも往々にしてありますよね。それに打ち勝つ秘訣は「鳥の目」と「魚の目」。これについては、また次回!
澁谷 裕之(しぶや ひろゆき)
医療法人メディカルビットバレー 理事長
新潟県長岡市生まれ。
弘前大学医学部卒業。
2020年4月に医療法人メディカルビットバレーを設立。
家庭医療専門医、プライマリケア認定医。
好きな言葉は「即断即決即実行」、「適材適所」。