新型コロナワクチン出張職域接種の経験
【Dr.伊藤】
第119回日本内科学会講演会(2022年4月15日~17日)において、「新型コロナワクチン出張職域接種の経験」という演題名で、当院で行った取り組みについて報告しました。発表の内容をご紹介します。
新型コロナウイルス感染症の拡大により多大な制約を受けた社会経済活動の早期正常化に向け、現役世代に対する新型コロナワクチン接種への企業の期待は大きなものがありました。当院では2021年6月21日~10月11日の間に、計49回の出張職域接種を行いました。
各企業との複数回の打ち合わせや現地調査を基に、受付・接種ブース・接種後待機場所・救急対応場所・ワクチン保管調製場所などのレイアウトを定め、企業の会議室や食堂などを利用して接種会場を設営しました。衝立や椅子、テーブルは企業のものを借用し、医療用の器材や簡易ベッドは当院から運んで設置しました。接種をスムーズに行うために、接種ブース前、接種後待機場所前などに、自作した案内表示を設置しました。企業側に被接種者の名簿作成と来場管理を依頼するとともに、副反応対策として接種日の分散を提案しました。医師、看護師、株式会社共栄堂の薬剤師、運営スタッフからなる十数名のチームを派遣し、医師は問診と接種をワンストップで行いました。
接種実績は、実施母体企業7社(参加企業100社以上)、被接種者数は1社あたり約1000~3000名、ワクチン接種総回数は22875回に達しました。受付開始から接種までの時間は平均3分、救急対応を要した40件のうちアナフィラキシーや救急搬送に至った症例は無く、迅速で安全に接種を行うことができました。ウェブで行った接種後アンケート(有効回答者数117名:男性91名・女性26名、平均年齢45.3歳)では、103名(88%)が副反応による業務への影響はなかったと回答しました。また105名(90%)は、土日祝日前の接種、接種翌日の特別休暇あるいは業務軽減といった企業側の配慮があったと回答しました。接種全般の満足度(10段階評価)は111名(94.8%)が8以上と評価しました。とくに接種日の分散、接種のスムーズさ、医師による接種の安心感などが高く評価されました。
職域接種はワクチン接種普及を加速化させる効率的な運用形態ですが、当院の医療資源や運用ノウハウと企業の管理統制力が合わさり、より効率的で安全な出張職域接種が実現できました。