当院における新型コロナワクチン個別接種の運用
【Dr.田村】
第119回日本内科学会講演会(2022年4月15-17日開催)にて、「当院における新型コロナワクチン個別接種の運用」という演題名で、当院を会場としたワクチン接種の取り組みについて発表しました。
以下、発表の内容です。
当院は、新型コロナワクチンをより多くの人に迅速に接種することを急務とし、通常診療と並行して積極的なワクチン接種を行いました。
人々のニーズに合致する効率的なワクチン接種運用法の確立を目指し、独自の個別ワクチン接種システム(長岡モデル)を構築しました。
「長岡モデル」は、①広義の分散型集団接種(昼休憩・休日の集中接種、企業・事業所単位の集団受付や副反応対策としての平日分散接種)、②当院医師・看護師・事務、調剤薬局薬剤師からなるチーム体制、③医師による問診との同時接種を特徴としています。
実際の接種の流れですが、受付で必要事項を確認後、診察室にて医師が問診に引き続いてワクチン接種を行い、接種時刻・待機時間を記したピンク紙を渡しました。
問診・接種時の様子から迷走神経反射を起こすリスクが高いと判断した人への接種はベッドで行いました。
ファイザー社・モデルナ社など薬剤別に薬剤準備場所、受付場所や予診票を入れるファイルの色を変え、動線が交わらないようにしました。
緊急時対応マニュアルを整備し、1回目に30分待機を指示した人や待機中に何らかの対応が必要だった人には、2回目接種時にあらかじめ対応できるよう、内容を記載した青紙を渡し、2回目に持参いただきました。
また、多くの人が聴き馴染みのある楽しい音楽を流しました。
運用法は状況に応じ、適宜変更しています。
このようなシステムを構築することで、平日400件、休日600件まで対応可能な接種体制となり、2021年6月1日から10月30日(演題登録時点)の期間に、43,768回(ファイザー製 26,455回、モデルナ製 17,290回、アストラゼネカ製 23回)のワクチンを接種しました。
受付開始からワクチン接種終了までに要した時間は平均3分と短く、接種後待機中の副反応は、多くが迷走神経反射で、蕁麻疹などの即時型アレルギー症状に対して抗ヒスタミン薬内服を行った者が数例、救急搬送は1例もありませんでした。
「組織立ったチーム運用やワンストップの問診・接種が、迅速かつ円滑なワクチン接種を可能とした」と総括し、少ない待ち時間やBGMによる緊張軽減、医師による問診・同時接種でのリスク回避が安全な運用につながった可能性について言及しました。
さらに、長岡モデルは今後のワクチン大規模接種時の一つのモデルとなりうると提案しました。
最後に、自前のワクチンセンターの設立、行政との取り組み(県ワクチン接種加速化センター、大規模ワクチン接種、見附市集団接種の一部の運営)、発表時点で総ワクチン接種数 10万件以上となっている当院の現状について言い添えました。