肺炎球菌ワクチンについて
年末年始からインフルエンザが流行しています。それに関連して、肺炎球菌ワクチンのご紹介をしようと思います。大事なワクチンの一つなので、対象の方は忘れずに接種しましょう。
肺炎球菌はインフルエンザとは異なる感染症ですが、一般的な肺炎や呼吸器感染症も冬季には罹患しやすいため注意が必要です。特に、高齢者における市中肺炎(日常生活を送る中で罹患する肺炎)の主な原因菌の一つが肺炎球菌です。
また、インフルエンザに伴う続発性肺炎や二次感染が、高齢者や基礎疾患を持つ方々に深刻な健康被害を与えることも分かっています。インフルエンザによる気道上皮の損傷は、肺炎球菌感染症を含む二次性細菌性肺炎を引き起こす要因となります。
こうした背景から、インフルエンザの重症化を抑える目的やその他の目的でも、肺炎球菌ワクチンの接種は重要な意味を持っています。
肺炎球菌ワクチンの種類と選択
肺炎球菌感染症の予防には、日本で使用される以下の3つのワクチンがあります。
※一般的に推奨されるのは1.です。
1. 23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23):ニューモバックス
- 対応血清型: 23種類の肺炎球菌血清型に対応し、広範囲の予防効果があります。
- 推奨対象: 高齢者を含むリスクの高い集団への一次予防として推奨されます。
- 効果の持続: 効果は約5年持続しますが、免疫反応は若干弱い傾向があります。
- 長岡市での補助: 65歳のときに1回、補助が受けられます(それ以降の接種は自費のみ)。
2. 13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13):プレベナー13
- 対応血清型: 結合型ワクチンで、長期的に効果が出ます。
- 推奨対象: 免疫抑制状態や基礎疾患を持つ患者に有効。
- 適用: 肺炎球菌性肺炎や侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の予防に効果的です。
3. 15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15):バクニュバンス
- 対応血清型: PCV13に加えてさらに2種類の血清型に対応する改良型。
- 適用拡大: 特定の患者における使用が期待されています。
ガイドラインに基づく高齢者への推奨
日本感染症学会のガイドラインでは、以下の条件を満たす患者に肺炎球菌ワクチン接種を強く推奨しています。
1. 65歳以上の高齢者
2. 慢性疾患を有する患者(糖尿病、慢性呼吸器疾患、心疾患、腎疾患など)
3. 免疫抑制状態の患者(悪性腫瘍、HIV感染症、免疫抑制薬の使用中など)
また、65歳未満でも以下に該当する方は接種が推奨されます。
- 60歳以上65歳未満で、心臓、腎臓、または呼吸器の機能に障害を持つ方
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫機能に障害がある方
接種スケジュールについて
基礎疾患のない方の場合、65歳から5年ごとにPPSV23(商品名: ニューモバックス)を接種することが一般的に推奨されています。当院でも主にこのワクチンの接種をおこなっています。
基礎疾患のある方では、PPSV23とPCV13またはPCV15の併用が検討されます。
ワクチンの併用を考える場合、接種スケジュールを適切に設定することも重要です。
- PCV13またはPCV15を先に接種し、1年以上の間隔を空けてPPSV23を追加接種することで、より効果的かつ持続的な予防効果が期待されます。
- 逆に、PPSV23を先に接種した場合も、1年以上の間隔を空けてPCV13またはPCV15を接種することも可能です(効果は逆の場合よりは劣ります)。
肺炎球菌ワクチンは、患者の健康状態や既往歴に基づいて選択されます。接種計画を立てる際は、かかりつけ医や専門医に相談することが大切です。
まとめ
インフルエンザ流行のピークを迎える前に、肺炎球菌ワクチンを含めた予防対策を講じることは、高齢者や基礎疾患を持つ患者にとって極めて重要です。インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの併用は、重症化リスクを最小限に抑える効果的な手段であり、健康な生活を守る鍵となります。
接種で迷われている方、特に65歳で市からの案内が届いている方は期限内での接種をお勧めいたします。