メディカルレボリューション|メディカルビットバレー

DOCTORS TALK

第1回「医療と経営の分離」

心を開けば楽になる

MBVは、ほぼ保険診療だけで黒字経営を維持し、今も成長しています。全国から集まった医師やスタッフ同士のチームワークも良く、それぞれがプライベートの充実とやりがいのある仕事のバランスを取って生き生きと働いていており、通院患者さんは1日400人以上になりました。

一方で「エールワクチンセンター」も開設し、現時点では医師2人、受付4人、看護師3人で1日約1000人に接種。世の中のニーズにここまで応えられていることが注目され、全国の医療機関や自治体からノウハウの問い合わせがあり、僕が出向くこともあります。

MBVがなぜここまで成長できたのか。それは医療と経営を分離し、それぞれが役割と責任を果たしながら、一体感を持って進んできたからです。創業当初から経営専門メンバーがいますし、現在は地元銀行からの出向者と共に経営能力を高めています。優れた医師やスタッフが全国から入職を希望してくれますので、少数精鋭を貫きながら、医療サービスの質も確保できています。

医師としての優秀さと、組織経営者としての能力は全く別。それなのに日本では医療組織のトップのほとんどが医師です。その地域に特別な事情がない限り、日本の保険制度で赤字を連発し、次々とスタッフが去るような医療組織は、トップに経営の才覚がないということ。コロナ禍でより顕著になりましたが、「社会性の強い医療は特別。医療機関は赤字でいい。お医者さまは別格」という時代ではなくなってきています。

組織の全体像を把握し、将来を見通して経営するには、様々な問題解決をしてきた一線のビジネスマン感覚が必須なのに、たいていの医師はビジネスの勉強をしていませんし、経験もない。医師だけでは経営がうまくいかないという事実を素直に受け入れ、心を開いて、ビジネスのプロフェッショナルとコンビを組めばいいだけの話です。「医療組織では医師が一番偉い」というプライドが、結果として自分たちも組織も損をさせている。もったいないことです。

「外部の経営コンサルに依頼すればいい」と考えるかもしれませんが、他人事として業績を見るだけのコンサルなど意味がありません。メンバーになって一緒に汗を流し、苦楽を共にする覚悟のある人間でなければ無理。MBVはマネジメント人材リクルートをしていますが、あえて医療系未経験者を募集しています。医療界の前例や固定観念、悪しき慣習に囚われず、MBVの今現在を見極め、これからの世の中の動きを予測して経営に携わってほしいからです。必要な医療の知識など入職してもらえば優秀な人は自分で学びますから、全く問題はありません。

医療組織だからこそ、健全な組織経営で、保険診療だけでも黒字を目指すべきです。世の中は刻々と変わっています。医師免許を取得したらその後50年心配なく暮らしていける時代じゃない。赤字で病院やクリニックの閉院もあり得るし、承継問題など課題は山積みです。時代の変化のスピードに遅れずに、より質の高い医療の提供を目指すなら、医師やスタッフが経済的に安定し、気持ちよく働ける組織作りが肝心です。

MBVの実績を見ていただければ、病床のない地方のクリニックがコロナ禍という非常時であっても社会ニーズに応えられることは明らか。今後は病院の外来がスリム化され、医療の最前線にいるクリニックはますます重要になり、価値を増します。地域医療にも大きく貢献できるMBVの概念、ノウハウを導入すれば、新規開業だけでなく既存の医療機関もどんどん良い方向に変わる。諦めずに一歩踏み出すことが大事です。

澁谷 裕之(しぶや ひろゆき)

医療法人メディカルビットバレー 理事長

新潟県長岡市生まれ。
弘前大学医学部卒業。
2020年4月に医療法人メディカルビットバレーを設立。

家庭医療専門医、プライマリケア認定医。
好きな言葉は「即断即決即実行」、「適材適所」。

好きな仲間と、好きな場所で、
ワクワク仕事して、サイコーの業績をあげる!