エールホームクリニック

「そうだ、学会行こう」

『新型コロナウイルスの現状と課題』 第118回日本内科学会 〜Dr.田村編〜

2021年4月28日

第118回日本内科学会講演会が会場参加(4月9日~11日)とネット配信(4月9日~23日)にて開催され、ネット配信視聴で参加しました。内科全般の多岐に渡る内容で、2週間のアーカイブ配信中、興味のある講演を複数拝聴できました。

その中で、新型コロナウイルス関連で特別講演1つ、シンポジウム1つが組まれていました。
東京大学医科学研究所 河岡先生は、新型コロナウイルスの動物感染モデルの研究など、自施設の豊富な研究データを提示されました。
飛沫・近距離エアロゾル感染の評価モデルによるマスクの効能を評価した研究では、感染者がマスクをしていない場合、飛沫を受けた側の吸い込んだウイルス量は、受け手がマスク未着用の状態を100%とした時に医療用マスク着用でも50%程度にしか減らせませんでしたが、感染者がマスク(布でも、医療用でも)をした状態では、受け手がマスク未着用でも20%台まで減らすことが可能でした。無症状や発症前にもウイルスが排出されることも知られ、ユニバーサルマスク(すべての人が常時マスクを着用すること)の有効性を立証した研究です。

シンポジウムでは、諸先生が、新型コロナウイルスのパンデミックで明らかになった本国の問題点を挙げていました。
中国で新型コロナウイルスが発生した2019年11月以降、世界では、2020年1月にウイルス遺伝子配列公開、3月からワクチン臨床試験開始、12月にはワクチン承認・接種開始と、異例のスピードで物事が進みました。
治療においては様々な薬剤が候補に挙げられた中、臨床試験データが集積し、今現在はレムデシビル、デキサメタゾンが有効性のある薬剤として挙げられています。また、CDCのガイダンスでは、新型コロナウイルスの感染拡大阻止のためには、無症候性感染者・発症前感染者からのサイレントな伝播を遮断する必要性があり、必要な状況・対象者へのスクリーニング検査を推奨しています。

このような中、日本は論文発表数で出遅れていること、ファビピラビル(アビガン)などの薬剤が基礎・臨床研究の根拠不十分なままに臨床現場で投与されたこと、PCR検査能力が著しく劣っていることなど、国家的基盤が脆弱で、科学的評価体制が整っていない問題が浮き彫りとなったと指摘されました。
新型コロナウイルスは将来的にはおそらく5種目の風邪を引き起こすコロナウイルスとして人類に定着すると思われますが、それまでをいかにうまく対処していくか、また今後も繰り返されるであろうパンデミックへの対策に、将来に向けて何を構築していくかを考えなければいけないとの言葉でシンポジウムは終わりました。

講演を拝聴し、未知なものに出くわした時、様々な角度からその実態を評価し把握するよう努めること、基礎研究・臨床試験などで明らかにされた根拠に基づいた対応をしていくこと、いち医療者として情報を吟味した上で常に知識をアップデートしていくことの重要性を改めて感じました。
クリニック診療においても、大局的見地を持ち合わせつつ、自身の行動の実践と身近な患者さまへの必要十分な説明に努めていきたいと思います。

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